伊勢崎彰大 / 鈴木浩太

2022.08.15

フォトストーリー

出場回数は2桁のベテランと、今年5月に初優勝を飾った若手がPIST6について語り合った。1998年にデビューの伊勢崎彰大、プロ2年目の鈴木浩太両選手ともに昨年10月の開幕以来、地元レーサーとして数多くの戦いをTIPSTAR DOME CHIBAで繰り広げてきた。ここまでを振り返って、「PIST6が現実になったのは感慨深いものがありました」(伊勢崎)、「地元で華やかなレースが始まったのは嬉しかったです」(鈴木)。2人のレースへの、そしてPIST6への思いを写真とともに紹介する。

接戦の末、後輩が勝利した「直接対決」

これまでの出場回数は伊勢崎選手が10回(7月末時点)、鈴木選手が5回。中でも鈴木選手は2022年5月の「ファーストクォーター」ラウンド6で初の頂点に輝いた。そんな2人の直接対決が 6月の「セカンドクォーター」ラウンド1の1次予選で実現した。レースは三好恵一郎選手(群馬)が大逃げを打つも、伊勢崎選手が猛追。鈴木選手も残り半周でスパートし、フィニッシュ前は接戦となったが鈴木選手が1着、伊勢崎選手は2着だった。

伊勢崎選手は「同県でも後輩でも僕は『負かしてやろう』という気持ちで走っています。一方で3着までを予想する賭け式もある以上、トップ3に入ることも大切」と強調。その上で「強い選手に対し、どう上位に食い込むか、そして1位になる可能性をどう見出すか、僕は最後の直線勝負に懸けました」。鈴木選手は「ラストはなんとか追いついた感じでした。同県の先輩の存在はもちろん気になりましたね」と苦笑いを浮かべた。

2人の直接対決の様子はこちら

「思いっきり行けよ」若手に言葉掛ける

そんな2人は既存競輪において、同県の選手としてラインを組んで走る。5月に函館競輪場で行われたレースでは伊勢崎選手が1着、鈴木選手が2着とワンツーフィニッシュを決めた。先輩後輩という関係において、伊勢崎選手はどんな時でも「思いっきり行けよ」と鈴木選手ら若手に声を掛ける。「自身のことを客観的に見すぎると、走りがどうしても小さくなってしまいます。そんな時、思いっきりが自信を生む材料になるのではないでしょうか」。

そんな言葉を胸に、果敢に攻めるレースを目指す鈴木選手。「先輩方から様々なアドバイスをいただいています。まだまだ経験を積んでいる段階ですね」と、引き締まった表情を見せた。

鈴木選手、同期との先行勝負を渇望

単騎でのバトルとなるPIST6。それぞれにライバルや気になる存在がいるという。鈴木選手は同じ119期の堀江省吾選手(長野)の名前を口にする。「プライベートでも仲が良く、脚質も似ています。堀江にできるなら俺もいけるのではないかと発奮させてくれます」。鈴木選手の初優勝は堀江選手が2度目の優勝を決めた翌開催とタイミングも近く、「火をつけられました」と話す。

力をもらう同期について、「彼はPIST6を楽しんでいますよね。輝いていて、どこかうらやましさがあります」。鈴木選手は堀江選手との「先行勝負」を渇望する。初優勝の影にあったライバルとの激突も、楽しみだ。

伊勢崎選手、同世代に小さな「ライバル心」

「僕はあまりライバル意識を持たない」と話す伊勢崎選手だが、気になる存在として市本隆司選手(広島)を挙げる。現在50歳のベテランはここまで4度の決勝進出と、存在感を際立たせている。「僕も40歳を越えましたが、この世代で頑張っている選手に対して、小さなライバル心が芽生えるんです。その中で市本さんのタイムや気持ちの持ち方はリスペクトに値します」。

そしてもう一人、小佐野文秀選手(山梨)の名前も。「小佐野さんのパフォーマンスは振り切っていますよね。こちらの気持ちを失せさせました(苦笑)。選手カードの表情には度肝を抜かれましたね」。自身の顔を両手で持つ独特のスタイルに「あれは小顔のモデルさんのもの」と、表現した伊勢崎選手。自身も登場シーンで熱い思いを示すだけに、負けないパフォーマンスに期待したい。

真剣勝負しつつ、それを楽しむ

昨年10月に開幕し、まもなく1年を迎えるPIST6。この間の変化について鈴木選手は、開催に対して「楽しい」という気持ちが芽生えているという。「僕は自転車競技が好きでタテの勝負ができることに良さを感じています。あと会場も距離感が近く、観戦にきた友人を発見したこともあります」。競技の面でも展開の早さからスピード力がついてきた。思いっきりの良さをさらに発揮し、2度目の王者を目標に据える。

PIST6という新たな取り組みを「自慢」と胸を張った伊勢崎選手。鈴木選手の「楽しい」という言葉にこう返答した。「浩太が楽しいと言ってくれましたが、僕ら選手をはじめスタッフも一丸となり楽しめるようになると、観ている人たちにもより魅力が伝わるはずです」。真剣勝負に挑みつつ、それを楽しむ2人の姿が、さらにPIST6を盛り上げる。