木村 皆斗

2022.07.26

インタビュー

2022年6月13日、14日に行われたセカンドクォーター ラウンド1で、PIST6 Championshipにおける最年少優勝を果たした20歳の木村皆斗選手。強豪揃いとなった決勝時の心持ちやレースの振り返りとともに、自転車競技との出会いや最近購入した車の話など、プライベートについても語っていただきました。

Q

木村選手の経歴から伺いたいのですが、ご出身は千葉県ですか?

A

千葉県流山市出身です。埼玉県との県境でもあるのですが、茨城県へも近い場所です。

Q

千葉に住んでいた頃は何かスポーツをされていましたか?少しだけバトミントンをされていたと聞きました。

A

バトミントンは中学生の頃、仲の良かった1歳上の友達に誘われて部活に入部しました。でも、僕にはバトミントンの才能はなく、試合にも出られなかったので途中から幽霊部員になりました(笑)。また、小学生の頃は陸上競技のハードル走をしていたのですが、「楽しい」止まりでその先へは行かなかったですね。

Q

その後、高校では自転車部の名門である取手第一高校へ進学されましたが、自転車競技を選んだきっかけはなんですか。

A

中学校進学と同時に親にロードバイクを買ってもらったんです。そのロードバイクを乗り回すことが楽しくてしょうがなくて、自転車関連でレースができる高校を探していたのですが、取手第一高校は自宅から通うことができる距離にあり、僕にとって丁度良い高校だったので進学を決めました。母校があって良かったです(笑)。

Q

中学校進学のタイミングでロードバイクを買ってもらった理由を教えてください。

A

小学校3年生頃から自転車が好きでした。家の近くを流れる江戸川にサイクリングロードがあり、そこを使えば自転車で東京まで行くことができるんです。小学生のとき、地図帳という教科書を見ることがとても好きで、「地図帳に載っているところに行ってみよう!」と思い、ホームセンターで買えるマウンテンバイクのような自転車であちらこちらに行ってました(笑)。極めつけは片道50キロ弱ある、千葉市の祖母の家まで行きましたね。本当に自転車に乗ることが好きでした。 

Q

小学生の頃からそこまでの自転車好きであれば、取手第一高校への進学はご家族にとっても驚きではなかったのでしょうか。

A

直接聞いてはいませんが、恐らく「なるべくしてなったんじゃないか」と思っているはずです(笑)。

Q

高校時代には、スクラッチでインターハイと国体の二冠に輝かれています。当時を振り返っていかがですか?

A

自転車競技が本当に面白く、高校生活も楽しかったので、3年間は駆け抜けたようなイメージです。当時からすると、中長距離を主戦場にしていたので、競輪選手として短距離に挑むとは予想外でした。

Q

同県同期の吉田有希選手(茨城・119期)とは高校からの仲ですか?

A

高校からの練習仲間です。有希はつくば工科高校に通っていたので高校自体は別でしたが、平日は有希が僕の高校に来て、週末はロード練習で長い距離を乗ったりと3年間、毎日一緒に汗を流していました。

Q

お二人とも競輪選手になられていますが、当時から一緒にプロを目指していたんですか?

A

有希は高校卒業後、競輪選手になると決めていたと思いますが、僕は大学進学かで迷っていました。でも高校3年生の時、インターハイ王者になり「もう日本一にもなれたし、大学で自転車競技を続けるよりもプロになるか」と考え、選手を目指すようになりました。

僕の高校の卒業生に、十文字貴信先輩や長塚智広先輩といったオリンピアンがいるのですが、二人とも競輪選手として活躍をされていたこともあり、後から考えると僕が競輪選手を目指したのは自然の流れだったのかなとは思います。

Q

木村選手にとって「自転車」はどんな存在ですか?

A

僕を遠くに連れて行ってくれる道具です。場所や時間など様々な意味を含めて、「遠く」に連れて行ってくれるものなので大好きです。

Q

乗り物好きのイメージがある木村選手ですが、やはり今一番楽しみにされているのはテスラのCybertruck(サイバートラック)の生産開始ですか?

A

まさかこのインタビューでCybertruckの話がでるとは思わなかったです(笑)。それも楽しみなのですが、生産開始はかなり先になると思うので、直近の楽しみは、同じくテスラのModel Xです。扉が上に開く車で、実は8月に納車予定です。

Q

テスラを好きになったのはいつからですか?

A

競輪選手になる前から好きですね。2019年にテスラのModel 3というセダンが発売されて話題になっていたのですが、その時に僕も「この車を買いたい」と思っていました。そこから、1~2年でそれを実現でき、良かったです!

Q

先日スペースX社(テスラCEO、イーロン・マスク氏の会社)のロゴをツイートされていましたが、この意味を教えてください。

A

スペースX社がロケットに飛行士を乗り込ませる時に使う車が、最近僕が購入したModel Xなんです。なので、あのツイートは「Model Xを買ったよ」という匂わせです(笑)。

Q

乗り物つながりで自転車のお話もお聞きしたいのですが、完全優勝されたセカンドクォーターラウンド1では、新車がマッチしていたと話されていました。何がどう良かったのか、ぜひ解説してください。

A

普段ママチャリに乗っていた人がロードバイクなどのスポーツバイクに乗り換えると、かなり速いので衝撃を受けると思うんです。僕はその衝撃をスポーツバイクからスポーツバイクへの乗り換えで受けました。

Q

前回も今回買われた自転車と同じARGON18の自転車でしたが、選ばれたポイントを教えてください。

A

吉田有希が「これいいぞ」と言うので買いました。彼は強いので「良い」と言えばなんでも良いような気がしてくるんです(笑)。実際にARGON18に乗せてもらった時にも、「良い機材」と感じたので買いました。

Q

PIST6で乗っているカーボンフレームは、木村選手にとって乗り慣れているフレームでもあると思います。既存競輪の機材と比較して、走りやすさなど違いはありますか?

A

人それぞれ好みはあると思いますが、PIST6はディスク、バトンホイールにエアロ形状のカーボンフレームとF1マシーンを見ているような気分になれるかっこよさがあると思います。既存競輪の機材はオールドスタイルなので目新しさはないですが、PIST6の機材とは違うかっこよさがありますし僕も大好きです。ただ、F1マシーンのようなかっこよさを見出すことができるPIST6の機材は、自転車好きの僕としては、特に見ていて楽しいですね。

Q

優勝したセカンドクォーターラウンド1についてです。2次予選のレース中盤、佐野梅一選手(京都・78期)、塚本大樹選手(熊本・96期)が後方から上がってきましたが、残り2周目まで佐野選手にフタをし、その後一気に仕掛けるという、かなり冷静なレース運びに見えました。この部分は元々の予想通りだったのでしょうか?

A

正直、全く予想していなかった展開でした。レースは生き物なので流れがあるものだと思っているのですが、その流れの中で僕の位置が偶然そこだったので、勝つことができたのだと思います。

Q

かなり先が見えているような走りをされていたので、準備されていたのかと思っていました。

A

先が見えていたらもっと勝ってますね(笑)。PIST6だけではなく、既存競輪の方もまだまだなところを見ると、「先を読む力」は足りていないですね。

Q

決勝レースは、直近とても調子の良い佐々木豪選手(愛媛・109期)をはじめとして、先行力のある選手など強豪が揃いましたが、どのような心持ちで挑みましたか?

A

『とんでもないところに入ってしまったな』という気持ちでした。特に佐々木さんと脇本勇希さん(福井・115期)は決勝のメンバーの中ではずば抜けて力があったと思いますし、結果優勝はできましたが恵まれた展開になったと思っています。なので、今度は僕が佐々木さんや脇本さんのような立ち位置になり、なおかつ逃げきるというような走りをしたいですね。

Q

決勝メンバーでもある脇本選手からは「化け物じみた強さ」とも言われていましたが、ご自身の感覚として調子はどうでしたか?

A

本当に勿体ない言葉ですね。僕の体ではなく自転車が軽く、それが全てです。

Q

セカンドクォーターラウンド3の決勝では、その経験が生きたレースになったように見えました。

A

かなり生かされていますね。netkeirinの「坂本勉のPIST6徹底回顧」というコラムの中で、僕のことを書いていただいた記事を読み、見ている方をアッと思わせる競走をしたいと考えていました。さらにはその走りを再び記事にしていただきたかったんです(笑)。

Q

ラウンド1の決勝の話に戻りますが、2周回目に入ったところで、3番の伊勢崎彰大選手(千葉・81期)が上にあがり、木村選手の前がガッポリ空く形となりました。あれはレース前の想定とは違う動きでしたか?

A

あの動きに関しては、走っている選手の立場でも全く予想ができないものでした。先行力のある選手が、並び順で1番手、2番手などであればなんとなく察することはできると思うのですが、そうでもない場合、何人が上がるのかなどは予測不能だと思います。

Q

前が空いたと思ったら、残り2周回ペーサー離脱と共に一気に前が詰まりました。各選手それぞれが自由な動きをしていて全体的に読みづらいレース展開だったと思いますが、木村選手は冷静さを失っていなかったように見えました。

A

何をしたら良いのかわからず、頭がパンクして動けなかったくらいの表現が正しいと思います。かなり焦っていました(笑)。

Q

そんな中、最後1周で木村選手の前で踏みあっていた脇本選手、佐々木選手を捲り切る形となりました。あれはご自身の理想のタイミングで前にでることができたのでしょうか?

A

いえ、実はコーナーで外に膨れてしまっているシーンが2回程度あるのですが、あれはただ膨れてしまったのではなく『ひょっとして今なら追い越せるるんじゃないか』と思い外に振っていたんです。ただ、自転車がまったく伸びていかず、佐々木さんと脇本さんがかなり踏みあっていたので、あの段階では出る幕がなかったです。僕の自転車の出が悪かったので、ただフラフラしているように見えしまったと思います(笑)。

Q

ゴールシーンがかなり印象に残っているのですが、力強いガッツポーズを回しながら何かを仰っていました。あれは何と言っていたんですか?

A

「これで車の支払いができるぞ」という思いを込めて「よっしゃー!」と叫んでいました。僕と同じ状況でゴールラインを踏んだ選手は、みんな雄たけびをあげると思います。

Q

木村選手からは、勝負度胸や積極的に大胆に行く走りをされる印象を受けています。PIST6は完全個人戦となりますが、木村選手ご自身の中にも「年上だろうが、級班だろうが関係ない」というような強い気持ちがあるのでしょうか?

A

PIST6は新しいものなので、誰がどれだけ強いかまだそこまでわかっている段階ではないと考えています。なので、S級だろうがA級だろうが関係なく、自分がどこまでやれるのかを試せる面白い場だと思っています。毎回挑戦するような気持ちで走らせてもらっていますね。

Q

木村選手は、事前にレースの組み立てやパターンを考えて行くのか、出たとこ勝負で流れを見極めて順応していこうというタイプかどちらの要素が強いのでしょうか?

A

レースを走る前に、メンバーや車番を見て、どういった流れでレースが動くか複数の展開を頭の中でシミュレートします。「ここで誰が行ったら誰が抑えにくるから、そこですかさず自分が行って…」といったパターンを10個、20個と考えるのですが、自分が考え付かなかった展開になることが多いんです。なので、僕はそいうった展開を考えるのは向いていないと実感しました。

ちなみに、僕は車券の予想は出来ないと思います。僕のようなタイプが車券を買っても、おそらく予想が当たらないので儲からないです(笑)。

Q

木村選手のストロングポイントはどういった部分でしょうか?ファンの方に見てほしいポイントがあれば教えてください。

A

仕掛けどころでしっかりと先頭に立てる部分でしょうか。一着を狙いに行く姿勢を見ていただきたいです。

Q

最後に、木村選手を応援しているファンに向けてメッセージをお願いします。

A

いつもレースを見ていただいてありがとうございます。これからも、PIST6を盛り上げていけるような選手を目指して頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。